フランチャイズに進出したいなら、ぜひ補助金を活用しよう。
国や地方自治体からお金をもらってフランチャイズ事業に乗り出すことができます!
飲食業界の皆さん。
コロナ禍がなかなか収束しません。売上減などに苦しんでおられる方も多いでしょう。
どこか元気なフランチャイズチェーンに加盟して、新しい事業に乗り出そう、という方もいらっしゃるでしょう。フランチャイズに加盟したら、フランチャイザーのノウハウや知名度を活用できるでしょう。
今までの飲食店をそのまま続け、サイドビジネスとしてフランチャイズに加わる、あるいは、思い切って今までの事業にケリをつけて、新しいフランチャイズビジネスを本業にしよう。
お考えは様々でしょう。
そんなときに国や地方自治体から「補助金・助成金」というお金をもらう方法があります。「補助金・助成金」は融資と異なり、返済不要な資金です。
返済不要といっても公のお金をいただくのです。事業計画をちゃんと作って審査を受けて採択してもらう(すなわち合格する)必要があります。
事業をやりながら、難しい事業計画を作るのは大変ですが、そのために専門家のサポートが得られる仕組みがあります。ともかく、一歩踏み出してみませんか。
この記事は、国や地方自治体からお金をもらってフランチャイズ事業に乗り出すためのワンポイントレッスンです。
(参考)
「補助金」は事業をサポートする資金、「助成金」は厚生労働省等が所管し、人の異動や働き方をサポートする資金、とお考えいただければ良いでしょう。いずれも返済不要です。
「事業再構築補助金」でこんなフランチャイズの事例がある
「事業再構築補助金」という補助金があります。2021年3⽉に始まった新しい制度です。目的は「コロナに苦しむ中小企業等の思い切った事業再構築を支援して日本経済の構造転換を促す」とされており、国(中小企業庁)が大変力を入れ巨額の予算を投入されています。
この事業再構築補助金だけ見ても、飲食店がフランチャイズに乗り出して補助金を受けた事例がたくさんあります。一例をご紹介します。
①居酒屋から宅配専門飲食店にフランチャイズ加盟して事業転換
新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要を狙った居酒屋は回復の見通しが立たない。とんかつを主に10ブランドの商品を提供する新業態の宅配専門飲食店にフランチャイズ加盟して事業転換に取り組む。
②アレンジした京生麩と古くから人気が高いうなぎ料理のコラボ店を開く計画
京生麩をアレンジした斬新な料理と、国民食のうなぎ料理のコラボレーション店をオープンさせる。うなぎ料理は「宇奈とと」のフランチャイズ店となり、経営の安定化を図る。
京生麩とうなぎとの顧客を相互誘導させて集客数や売上の増加を図り、コロナの影響を凌駕してV字回復を達成する。
③飲食店ブランドを30以上展開している企業とフランチャイズ契約を締結し、1拠点で7ブランドを展開する
Uber Eatsと出前館の2つのフードデリバリーサービスに出店し、オンラインで注文を受け付け調理・配達する。
④「夜の飲食店」から「昼の飲食店」へ
「社交飲食店」が、フランチャイズで「焼き味噌ラーメン」を武器に夜の世界から昼の世界へ、生き残りをかけて新事業を展開します。
⑤しゃぶしゃぶ店から菓子小売店への事業転換による新型コロナウイルスからのV字回復
新型コロナウイルスの影響で売り上げが低下した「しゃぶしゃぶ」から、フランチャイズチェーンのケーキ屋シャトレーゼへ事業転換、店内飲食を伴わない店舗形態で売上回復を目指す。
引用:事業再構築補助金第5回採択事例より。
どんな経費が補助の対象になるのか
いくらぐらいもらえるか(補助金の額)
従業員規模に応じ、上限額2,000万円から8,000万円です。これだけ大きな額の補助金がもらえる制度は珍しいです。コロナからの思い切った回復を目指す企業には、国がちゃんと補助してくれるのです。
従業員 | 補助額 | 補助率 |
20人以下 | 100万円~2,000万円 | 中小企業:2/3(6,000万円超は1/2) |
21~50人 | 100万円~4,000万円 | 中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3) |
51~100人 | 100万円~6,000万円 | |
101人以上 | 100万円~8,000万円 |
表の中の「中小企業」は、業種ごとに要件が異なります。
「飲食店」や「持ち帰り・配達飲食サービス業」などは「小売業」です。製造した商品をその場で販売する「製造小売」、例えば「パン屋さん」も小売業です。
小売業なら、資本金5,000万円以下又は従業員数50人以下の場合が中小企業です。資本金、従業員いずれかの要件に該当すればよいのです。従業員が50人なら、資本金が7,000万円でも中小企業に該当します。
補助率は3分の2です。6,000万円の経費を使った場合、最大4,000万円の補助金がもらえることになります。(特別の要件に該当すれば補助率が4分の3になることもあります)
どんな経費が補助対象になるのか
補助対象経費の範囲はとても広いものです。フランチャイズ事業に乗り出すための建物の改修、機械装置・システム構築費、外注費、広告宣伝・販売促進費、さらに研修費(例えばフランチャイズ本部で研修を受ける費用)も補助対象です。
但し、フランチャイズ加盟料は補助対象外です。そのため「フランチャイズ事業は補助対象にならない」という誤解もあるようですが、間違いです。加盟料だけが補助対象外なのです。
補助金は後払い。まずは自己資金や借入金で事業を始めること
注意すべきなのは、補助金はすぐもらえるわけではないということです。
いったんは自分のお金や金融機関などの借入金で事業を始め、使った経費をもとに、あとから補助金がもらえます。つまり後払いなのです。
現在募集中の第7回事業再構築補助金について説明します。
申請の期限は9月末です。12月初めくらいに採択(すなわち合格発表)があります。
その後で経費見積書などを提出して「交付申請」し、認められれば「交付決定」となります。
交付決定後に事業開始し、自己資金や金融機関からの借り入れで経費を払っていきます。
その後に実績報告を提出、確定検査があって補助額が確定し補助金が支払われます。
自己資金や借入金で経費を支払った後、最長で1年以上経ってから補助金がもらえる、と考えておく必要があります。金融機関などに相談して、補助金が出るまでのつなぎ融資をしてもらえるよう交渉しておく必要もあるでしょう。
専門家と協力して事業計画書を作る
補助金を申請するためには事業計画書を作る必要があります。
事業計画には、次のような項目を盛り込むことになっています。
●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
「これは大変だ!自分で作るのは大変だ!」と慌てなくても大丈夫です。
事業再構築補助金については、「認定経営革新等支援機関」という専門家と相談して事業計画を策定することになっています。身近なところでは商工会議所・商工会、あるいは資格を持った税理士、中小企業診断士等の専門職です。様々なコンサルタントなどで事業計画策定を手伝ってくれる人も沢山います。このような専門家にまず相談しましょう。
まとめ
フランチャイズ加盟は、新事業に乗り出す有効な方法です。国や地方自治体も補助金などで事業者の前向きな取組みを支援してくれます。
それでも、実際に事業を行うのはあなた自身です。基本的な情報収集をしっかり行った上で、専門家のアドバイスも受けながら、あなた自身で決断してください。
この記事がそのためのヒントになれば幸いです。
執筆者プロフィール
玉上 信明(たまがみ のぶあき)
社会保険労務士 健康経営エキスパートアドバイザー
1950年大阪府生まれ。1974年京都大学を卒業し、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)に入社。年金信託部門、法務コンプライアンス部門に従事。在職中に社会保険労務士資格取得。
2015年同社定年退職後、社会保険労務士事務所開業。執筆やセミナーを中心に活動。人事労務問題を専門とし、企業法務全般や時事問題にも取り組み。補助金関係の業務にも注力しています。