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Uber Eats(ウーバーイーツ)の広告を出すと、管理画面に「ROAS(広告費用対効果)」という数字が表示されます。これが6倍、7倍といった値になると、広告が大きな成果を上げたように見えます。
ですが、この数字をそのまま「儲かった倍率」として受け取ってよいのでしょうか。
今回は、都内で鮮魚店を営む店舗が Uber Eats の広告を18日間運用した実データを使って、この点を検証します。結果はROAS7.98倍。それでも、この店舗の売上は増えたとは言い切れませんでした。なぜそうなるのかを、商品1点単位の販売データまで掘り下げて確認していきます。
先に結論
- ROASは7.98倍、広告経由の売上は155,820円と表示された
- しかし1日あたりの売上は、広告直前の13日間より約20%低かった
- 「広告経由の売上」は純粋な増加分ではなく、広告がなくても入っていた注文を多く含む
- 広告で明確に変わったのは売上規模ではなく売れた商品の内訳だった(海鮮丼が増え、単品の刺身が減った)
この記事で扱うデータについて
本記事の数値は、すべて Uber Eats Manager(店舗向け管理画面)の実測値です。売上サマリーに加えて、商品1点単位の明細が出力される「お支払いの詳細(商品レベル)」レポートを取得し、日付ごとに集計し直しています。
- 対象店舗:都内の鮮魚店(店舗名は非公開/刺身・海鮮丼・貝類などを販売)
- 広告の種類:スポンサードリスティング(検索結果・フィード内に表示される広告)
- 広告の実施期間:2026年6月29日〜7月16日(18日間)
- 比較に使った期間:2026年5月(基準月)、広告直前13日間、広告停止後28日間
実測値から計算した数値は、本文中で「計算値」と明記しています。
実施した広告と、表示された実績
設定内容は次のとおりでした。
- 1日あたりの予算:1,429円
- 配信対象:すべての利用者(絞り込みなし)
- 開始日:2026年6月29日
18日間の運用後、管理画面には次の数字が表示されました。

| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 広告費用対効果(ROAS) | 7.98倍 |
| 広告経由の売上 | 155,820円 |
| 広告費用 | 19,521円 |
| 広告経由の注文 | 38件 |
| 新規のお客様 | 22人 |
なお広告費用19,521円のうち19,441円は Uber Eats から提供された広告クレジットで、この店舗の自己負担は80円でした。
数字だけを見れば「約2万円の広告費で15万円以上を売り上げた」と読めます。しかし、実際の売上推移を確認すると話が変わります。
ROAS7.98倍なのに、なぜ「売上が増えた」と言えないのか
商品レベルのデータを日付で区切り、期間ごとの1日あたり売上を計算しました。期間の長さがそれぞれ異なるため、単純な合計ではなく1日あたりに揃えています。

| 期間 | 日数 | 注文数 | 1日あたり売上 | 客単価 |
|---|---|---|---|---|
| 5月(基準月) | 31日 | 87件 | 12,134円 | 4,324円 |
| 広告直前(6/16〜6/28) | 13日 | 47件 | 16,752円 | 4,634円 |
| 広告期間(6/29〜7/16) | 18日 | 57件 | 13,451円 | 4,248円 |
| 広告停止後(7/17〜8/13) | 28日 | 68件 | 11,501円 | 4,736円 |
ここで注目していただきたいのは、比較する期間によって結論が正反対になるという点です(いずれも計算値)。
- 基準月の5月(12,134円)と比べると、広告期間は約11%多い
- 広告直前の13日間(16,752円)と比べると、広告期間は約20%少ない
広告期間の総売上は242,120円でした。管理画面が示す「広告経由の売上」155,820円は、その64%にあたります。しかし総売上そのものは、広告を出していない直前期間を下回っています。
「広告経由の売上」とは何か──ROASの正しい読み方
この矛盾を説明する鍵が、「広告経由の売上」という指標の定義にあります。
これは広告を経由して発生した注文の売上であって、広告によって新しく生まれた売上ではありません。もともとこの店舗を注文しようとしていたお客様が、たまたま広告枠に表示された店舗をタップして注文した場合も、この数字に含まれます。
つまりROASは、次のように理解するのが正確です。
| 誤った理解 | 正確な理解 |
|---|---|
| 広告費1円が1円の新規売上を生んだ倍率 | 広告枠を経由した注文の売上が、広告費の何倍だったかを示す比率 |
| ROASが高い=売上が大きく伸びた | ROASが高い=広告枠経由の注文が多かった(元からの注文を含む) |
すでに一定の集客力がある店舗ほど、広告がなくても入っていたはずの注文が「広告経由」として計上されやすくなります。この鮮魚店は広告実施前から月商35万円前後で安定していました。ROASが高く出た一方で総売上が伸びなかったのは、これが理由だと考えられます。
広告の実際の効果を知りたい場合は、ROASだけでなく広告を出していない期間と、1日あたりの売上を比べる必要があります。
広告で変わったのは売上ではなく「売れた商品」だった
では、この広告にはまったく効果がなかったのでしょうか。商品レベルのデータを見ると、はっきりとした変化が現れていました。

| カテゴリ | 広告直前 | 広告期間 | 1日あたりの変化 |
|---|---|---|---|
| 海鮮丼 | 15個 | 31個 | 1.15個 → 1.72個(+50%) |
| 刺身(単品) | 60個 | 45個 | 4.62個 → 2.50個(−46%) |
| 貝類 | 17個 | 22個 | 1.31個 → 1.22個(ほぼ横ばい) |
増えたのは生うにいくら丼、鉄火丼、ネギトロ丼といった丼ものでした。逆に減ったのは本マグロ中トロ、エンガワ、カンパチといった単品の刺身です。
ここから読み取れるのは、広告が連れてきたお客様の性質です。
- 単品の刺身を選ぶのは、店を知っていて好みが決まっている既存のお客様
- 丼ものを選ぶのは、一品で食事が完結するものを探している新規のお客様
管理画面に表示された「新規のお客様22人」という数字とも、この解釈は一致します。客単価が4,634円から4,248円へ下がったのも、単価3,980円前後で完結する丼ものが増えた結果として説明がつきます。
なお、個々の商品単位では販売数が1日あたり0.1〜0.2個の差にとどまるため、商品ごとの断定は避けています。カテゴリ単位であれば母数が足りているため、上記の傾向は信頼できると判断しました。
高単価な業態で広告を使うときの注意点
鮮魚店や寿司店のように客単価が高い業態には、広告運用上の特徴があります。
1. 少ない注文数で売上が構成されている
この店舗の1日あたり注文数は約2.4〜3.6件です。1件の有無が全体に与える影響が大きく、短い期間のデータでは判断を誤りやすいという前提があります。今回、広告直前の13日間がたまたま好調だったことが、比較結果を大きく左右しました。
2. 広告は「単価の低い入口商品」に効きやすい
今回のデータでは、高額な刺身盛り合わせではなく、丼ものの注文が伸びました。新規のお客様が最初に選ぶのは、失敗のリスクが小さい商品です。入口となる商品をメニューに用意しているかどうかが、広告の成果を左右します。
3. 評価すべきは「新規客の数」と「その後のリピート」
売上が横ばいでも、22人の新規のお客様に届いたこと自体には価値があります。ただしその価値が確定するのは、その方々が再注文したときです。広告期間中の売上だけで判断を終えないでください。
3店舗を同じ基準で比べてわかること
当メディアでは、同じ時期に同じ種類の広告を実施した他2店舗も、同じ手法(広告の開始日・終了日で区切った1日あたり売上)で検証しています。

| 項目 | うどん店 | 鮮魚店 | 海鮮丼店 |
|---|---|---|---|
| ROAS | 6.91倍 | 7.98倍 | 3.78倍 |
| 広告経由の売上 | 134,450円 | 155,820円 | 37,560円 |
| 新規のお客様 | 38人 | 22人 | 8人 |
| 広告直前の1日売上 | 6,247円 | 16,752円 | 8,462円 |
| 広告期間の1日売上 | 8,098円 | 13,451円 | 3,126円 |
| 実際の増減 | +29.6% | −19.7% | −63.1% |
ROASが最も高かったのは鮮魚店(7.98倍)ですが、広告期間中に実際に売上が伸びたのはうどん店だけでした。ROASの順位と、実際の売上の伸びは一致していません。管理画面の数字だけで判断してはいけない理由が、ここにあります。
鮮魚店がROAS最高でありながら売上を落としたのは、前述のとおり「広告経由の売上」に広告がなくても入っていた注文が多く含まれていたためだと考えられます。
これから出店するオーナー様が確認すべきこと
広告を出す前の数字を記録しておく
これが最も重要です。広告を開始する前に、少なくとも直近1か月の1日あたり売上と注文数を控えてください。比較対象がなければ、ROASが何倍でも効果を判定できません。
比較期間は複数用意する
今回のように、13日間と1か月では結論が逆転することがあります。直前期間と、もう少し長い基準期間の両方と比べるようにしてください。
商品レベルのレポートを取得する
Uber Eats Manager の「レポート」から「お支払いの詳細(商品レベル)」を作成すると、商品1点単位の販売明細が取得できます。売上合計だけを見ていては気づけない客層の変化が、ここに現れます。1回のレポートで指定できる日数には上限があるため、期間を分けて取得してください。
まとめ
都内鮮魚店が Uber Eats の広告を18日間運用した結果、ROASは7.98倍、広告経由の売上は155,820円と表示されました。しかし1日あたりの売上で見ると、広告直前の期間を下回っていました。
「広告経由の売上」は純増分ではありません。すでに注文が入っている店舗ほど、この数字は実態より大きく見えます。
一方で、広告には売上規模とは別の効果がありました。海鮮丼を中心に、それまで注文のなかった層へ商品が届いています。広告を評価する際は、ROASという1つの数字ではなく、広告を出していない期間との比較と売れた商品の変化を合わせて確認してください。
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